君との恋のエトセトラ
ピッとカードキーをタッチしてガラス張りのドアを開けた航は、どうぞ、と凛を振り返った。

「え、すごい…」

恐る恐る足を踏み入れた凛は、照明が絞られた広い部屋から見える夜景に釘付けになる。

「わあ、綺麗…。今夜は満月なんですね」
「んー、まだ少し早いな。満月は明後日頃かも?」
「そうなんですか?」
「ああ。2015年のクリスマスの夜が満月だったよ。19年周期だから、次のクリスマス満月は2034年だ」
「へえ、そうなんですね。…って、クリスマス!そうか、今日はクリスマスでしたね」
「うん。だから君に、今夜はディナーをご馳走しようと思って」

え?と凛が航を見上げる。

「ほら、ここに座って」

航は部屋の中央の大きなテーブルに凛を促す。

そこには、たくさんの豪華な料理が用意されていた。

「ええ?!これは一体…」
「君に日頃の感謝を込めてね。さあ、座って」

本当は今夜がクリスマスだということを先程思い出し、慌ててデパートへ駆け込んで、あれこれキチンやオードブルを買い占めたのだった。

マンションの最上階のパーティールームはラッキーなことに空いており、航は備え付けのキャビネットから綺麗な皿を取り出してオードブルを並べておいた。

「まずは乾杯しよう」

航がグラスにシャンパンを注ぐ。

「それでは。メリークリスマス」
「メリークリスマス」

二人は微笑んでグラスを上げた。
< 115 / 168 >

この作品をシェア

pagetop