君との恋のエトセトラ
「河合さん!」

結局凛が航に声をかけられたのは、飲み会が終わってカラオケに移動する途中だった。

「あの、申し訳ありませんでした」
「は?何が?」

いきなり頭を下げる凛に、航が訝しそうに聞く。

「それは、その。私のせいで今月河合さんは思うようにお仕事が出来ずに…。そのせいでいつものような結果には…」
「ああ、なんだ。もしかして同情されてる?だとしたら情けないな」
「そ、そんな!まさか。私ごときが同情だなんて…」

航は立ち止まると、凛に向き直った。

「君のせいだなんて微塵も思っていない。だから君を責めるつもりも毛頭ない。だけど、こんなふうに言われたのは傷つくな」

えっ!と凛は思わず顔を上げる。

「全部俺の実力だ。誰のせいにもしない。あまり見くびらないでくれる?同情されて慰められるのを喜ぶ男ではないつもりなんだ」

そう言うと航は踵を返し、皆のあとを追う。
凛はしばらく動けずに立ち尽くしていた。
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