君との恋のエトセトラ
忙しい日々が続き、航の帰宅時間は連日深夜になった。

だが帰って来ると、凛が作ってくれた美味しい夜食が待っている。
それを励みに、航は日々仕事に打ち込んでいた。

ある日、いつものように0時を過ぎて帰宅した航は、玄関に凛のパンプスがあるのに気づいた。

え?と顔を上げると、奥のダイニングからほのかな明かりが漏れている。

急いでドアを開けると、凛はソファにもたれてうたた寝をしていた。

「凛、凛?こんなところで寝てると風邪引くぞ?」

軽く肩を揺するが、凛は、んー…と気だるそうな声を出すばかりだ。

その寝顔を見て、航はいつもの凛のメイクと違うことに気づく。

(セレーネのワンポイントレッスンの撮影日だったのか)

恐らくこのメイクは梅田によるもの。
ナチュラルな透明感と、華やかさや大人っぽさもある。

思わず見とれてしまうが、ハッと我に返ってまた凛に声をかけた。

「凛?ほら、起きて」
「んー、眠い…。あ、河合さん?どうしてここに?」
「どうしてって…。ここ俺の部屋だし」

え?!と凛は身体を起こして辺りを見回す。

「ほんとだ。どうしたんだろう、私」
「いや、どうしたもこうしたも…。疲れて寝ちゃったんだろう。ほら」

凛の膝の上には、畳みかけのタオルがあった。
< 151 / 168 >

この作品をシェア

pagetop