君との恋のエトセトラ
夕食の後、縁側に並んで座り、二人は静かに月を眺めていた。

「ねえ、凛」
「ん、なあに?」
「凛って名前は、誰がつけてくれたの?」

航の問いに、凛は懐かしむように仏壇を振り返る。

「実は、お父さんなの」
「そうなんだ!」
「うん。最初はお母さんが、女の子なら可愛い名前がいいって言ったんだって。そしたらお父さん、『ただ可愛いだけではなく、自分の力で人生を切り拓く強さも持って欲しい』って。それでこの名前にしたんだって」
「そうか。凛って言葉の響きのように可愛く、漢字が持つ意味のように凛々しい子に…。そんなお父さんの想いは、凛の中にずっと息づいているんだね。今までも、そしてこれからも」

そう言うと、航は凛のお腹に手を添えた。

「俺もお父さんと同じように、想いを込めた名前をこの子につけたい」
「ええ」

凛も微笑んで頷く。

「幸せになろうな、凛。俺がもっともっと幸せにしてみせる。賑やかで笑顔が溢れて、笑い声が天国のお父さんまで届くくらいに。そんな家族になろう」
「はい。航さんがそばにいてくれる限り、私はいつまでも幸せでいられます。お父さんに見守られて、安心して赤ちゃんを迎えられます。私と航さんの大切な宝物を、私も必ず幸せにしてみせます」

凛々しい凛の表情に、航も優しい笑みを浮かべながら頷いてみせる。
そして片手を凛のお腹に当てたまま肩を抱き寄せ、そっと凛にキスをした。

二人に降り注ぐキラキラと輝く月明かり。

空には綺麗な満月と、二人を見守る温かい星が煌めいていた。

……… 幸せにな、凛 …………

(完)
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