君との恋のエトセトラ
「え、な、なんてゴージャスなマンション…」

着いたよ、と言われて窓の外に目をやった凛は、ラグジュアリーな外観に驚いて目を見開く。

都会の一等地にも関わらず広い敷地に建てられたマンションは、緑に囲まれて静かで、そこだけゆったりと時間が流れる別世界のようだった。

地下の駐車場に車を停めると、凛のスーツケースを手に航はエレベーターホールへと向かう。

「あとで地上のエントランスも案内するね。コンシェルジュにも紹介したいし」
「コン…シェル…ジュ…」

初めて口にする、と思いながら凛は呟く。

「ロビーラウンジとライブラリー、シアタールームや防音の音楽室もあるよ。最上階のパーティールームと、あとは屋上のスカイデッキも」
「は、はい?」

もはや凛の頭の中はハテナで一杯になる。

「河合さんは普通のお方ではないのですか?あの、貴族か何かでいらっしゃいます?」
「は?一般ピープルの凡人だけど?」
「そんな方がこんなお住まいに?」
「うん。最近はこういう共用施設があるマンションが多いんだ」

ほわー、さすが都会、と凛は感心する。

「田舎では、防音室なんて無縁ですよ。どんなにうるさくしても隣の家は遠くて聞こえませんから」
「あはは!それいいね」

可笑しそうに笑う航は、エレベーターに乗ると20のボタンを押す。

「か、河合さん!20って、20階ってことですか?」
「うん」
「空に着いちゃいませんか?もしかして雲の上?」
「はは!残念ながらそれは無理だな」

ポーンとエレベーターの扉が開き、凛は恐る恐る航のあとをついて行く。
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