君との恋のエトセトラ
「じゃあ私、早速食料品の買い出しに行ってきますね。河合さんは苦手な食べ物ありますか?献立のご希望は?」
「特にないよ…って、え?まさか俺の分の食事も用意しようとしてる?」
「もちろん。そういう契約ですから」
「いや。俺が頼んだのは掃除と洗濯だけだよ?」
「そうでしたっけ?でもこのお部屋、隅から隅までピカピカで、掃除する必要もなさそうですけど」
「それはこのマンション、週に2回…」
そこまで言って慌てて口をつぐむと、ん?と凛が首をかしげる。
「いや、何でもないよ」
本当はマンションのクリーニングサービスが週に2回入って、掃除機はもちろん、ゴミの回収から窓拭き、キッチンやバスルームの水回りも綺麗にしてくれる。
更には衣類もクリーニングして翌日に届けてくれるのだが、それを凛に話すと「ハウスキーパーを雇う意味がない」と言われそうで黙っておく。
「河合さん。いつも食料品はどちらで?やっぱり高級スーパーとかでしょうか?」
「ん?ああ、ネットで買ってるんだ。タブレットで注文すると、3時間後に玄関まで鍵付きのクーラーボックスに入れて届けてくれる」
は?と凛は目を丸くする。
「そんな便利なことが本当にこの世に存在するのですか?」
「あ、ああ。存在しますとも。ほら、このタブレットで…」
航はローテーブルの引き出しからタブレットを取り出し、注文画面を表示しながら説明する。
「食料品をタップして、野菜やお肉、果物とかの項目を選ぶ。欲しい品物の写真をタップすると…」
「なるほど。個数を変更してカートに入れるんですね?」
「そう。試しに何か注文してみて」
「はい」
凛はタブレットを受け取ると、早速野菜のページを開く。
綺麗な長い指で操作する凛の仕草をなんとなく見ていた航は、ふいにタブレットを目の高さに持ち上げて首をかしげる凛に、ん?と眉根を寄せた。
「どうしたの?」
「あ、はい。このトマト、どれくらい熟してるか見てみようと思って。でも画面を横から見ても裏側は見えないですよね、あはは」
苦笑いする凛に、ますます航は眉間にシワを寄せる。
「いや、それ以前にその写真、実物じゃないから」
「あっ!そうなんですね?じゃあ写真では赤いトマトでも、実際に届くのは緑色だったりしますか?」
「は?さすがにそれはないよ」
「それなら良かった!」
ふふっと笑いかけられて、航は面食らう。
「君って不思議な子だね」
思わず口に出してしまうと凛が顔を上げた。
「それは、やっぱり田舎育ちだなってことですか?」
「いや、違うよ。なんて言うか…すごく新鮮な気持ちにさせられる。君の見ている世界はとてもピュアなんだろうな。俺はなんだか薄汚れた世界にいる気がする」
「ええ?!どういうことですか?河合さんは優しくて爽やかで、笑顔が素敵な方ですよ?薄汚れた世界だなんて、そんな」
「ははっ、ありがとう」
自虐的に笑うと、まだ困ったような表情を浮かべている凛の頭をクシャッと撫でてから、航は立ち上がる。
「さてと。良かったらこれから一緒にスーパーに行く?トマトも実物を確認してから買えるよ」
「あ、はい!行きたいです」
「よし、じゃあ車で行こう。支度して」
「分かりました」
凛は二人分のカップをキッチンで洗ってから、部屋で支度を整えた。
「特にないよ…って、え?まさか俺の分の食事も用意しようとしてる?」
「もちろん。そういう契約ですから」
「いや。俺が頼んだのは掃除と洗濯だけだよ?」
「そうでしたっけ?でもこのお部屋、隅から隅までピカピカで、掃除する必要もなさそうですけど」
「それはこのマンション、週に2回…」
そこまで言って慌てて口をつぐむと、ん?と凛が首をかしげる。
「いや、何でもないよ」
本当はマンションのクリーニングサービスが週に2回入って、掃除機はもちろん、ゴミの回収から窓拭き、キッチンやバスルームの水回りも綺麗にしてくれる。
更には衣類もクリーニングして翌日に届けてくれるのだが、それを凛に話すと「ハウスキーパーを雇う意味がない」と言われそうで黙っておく。
「河合さん。いつも食料品はどちらで?やっぱり高級スーパーとかでしょうか?」
「ん?ああ、ネットで買ってるんだ。タブレットで注文すると、3時間後に玄関まで鍵付きのクーラーボックスに入れて届けてくれる」
は?と凛は目を丸くする。
「そんな便利なことが本当にこの世に存在するのですか?」
「あ、ああ。存在しますとも。ほら、このタブレットで…」
航はローテーブルの引き出しからタブレットを取り出し、注文画面を表示しながら説明する。
「食料品をタップして、野菜やお肉、果物とかの項目を選ぶ。欲しい品物の写真をタップすると…」
「なるほど。個数を変更してカートに入れるんですね?」
「そう。試しに何か注文してみて」
「はい」
凛はタブレットを受け取ると、早速野菜のページを開く。
綺麗な長い指で操作する凛の仕草をなんとなく見ていた航は、ふいにタブレットを目の高さに持ち上げて首をかしげる凛に、ん?と眉根を寄せた。
「どうしたの?」
「あ、はい。このトマト、どれくらい熟してるか見てみようと思って。でも画面を横から見ても裏側は見えないですよね、あはは」
苦笑いする凛に、ますます航は眉間にシワを寄せる。
「いや、それ以前にその写真、実物じゃないから」
「あっ!そうなんですね?じゃあ写真では赤いトマトでも、実際に届くのは緑色だったりしますか?」
「は?さすがにそれはないよ」
「それなら良かった!」
ふふっと笑いかけられて、航は面食らう。
「君って不思議な子だね」
思わず口に出してしまうと凛が顔を上げた。
「それは、やっぱり田舎育ちだなってことですか?」
「いや、違うよ。なんて言うか…すごく新鮮な気持ちにさせられる。君の見ている世界はとてもピュアなんだろうな。俺はなんだか薄汚れた世界にいる気がする」
「ええ?!どういうことですか?河合さんは優しくて爽やかで、笑顔が素敵な方ですよ?薄汚れた世界だなんて、そんな」
「ははっ、ありがとう」
自虐的に笑うと、まだ困ったような表情を浮かべている凛の頭をクシャッと撫でてから、航は立ち上がる。
「さてと。良かったらこれから一緒にスーパーに行く?トマトも実物を確認してから買えるよ」
「あ、はい!行きたいです」
「よし、じゃあ車で行こう。支度して」
「分かりました」
凛は二人分のカップをキッチンで洗ってから、部屋で支度を整えた。