君との恋のエトセトラ
翌日の土曜日。
遅めに起きた航がダイニングに行くと、キッチンにいた凛が笑顔で振り返った。
「おはようございます!」
「おはよう。ごめん、寝坊した」
「いいえ。毎日お忙しいんですから、休日はゆっくりしてください。今、朝食運びますね。たまには洋食もいいかなと思って、フレンチトーストにしたんです」
「ありがとう」
夕べの木原の言葉が蘇り、なんとなく航は後ろめたくなる。
(彼女がうちで暮らしてること、内緒にしたままでいいのか?いや、話す訳にはいかないか。よく考えたらかなり非常識なことしてるもんな、俺)
同じ職場だが、凛は派遣会社に所属している為、住所が同じことは誰にも知られていない。
このまま隠し通すべきかと悩みながら食べていると、凛が恐る恐る尋ねてきた。
「あの、お口に合いませんか?」
航はハッと我に返る。
「いや、すごく美味しいよ。ふわふわでほんのり甘くて、ホテルの朝食みたいだ」
「それなら良かったです」
にっこり笑うと、凛は思い出したようにナイフとフォークを置いて居住まいを正した。
「あの、河合さん」
「ん?何?」
「先日、最初のお給料が振り込まれて、無事に実家に20万送金出来ました。本当にありがとうございました」
「そんな、俺が礼を言われる筋合いはないよ。君が働いたお金なんだし」
「いえ、全て河合さんのおかげです。本当にありがとうございます。それで、あの…。そろそろひと月経ちますが、いかがでしょうか?私をお試し頂いたご感想は…」
航はピタリと手を止める。
(私を…お試し…?)
それってどういう…?と固まっていると、凛が言葉を続けた。
「ハウスキーピングとしては、あまり良い働きぶりではなかったかもしれませんが…。なぜだかお部屋はいつもピカピカですし、料理くらいしか出来なくて」
「あ!その試用期間ね。いや、充分だよ。毎日本当にありがとう」
「では、あの、このまま続けさせて頂いても?」
「もちろん。こちらからお願いするよ」
「良かった!ありがとうございます。でもお洗濯物も、もっと出してくださいね?いつもタオルくらいしかなくて。それと、他に何か出来ることがあったら教えてください」
「これ以上は何もないよ。それより気になってたんだけど」
そう切り出すと、凛は真剣に頷く。
「はい、何でしょうか?」
「食料品のお金、もしかして君が払ってるの?タブレットで注文してって伝えたけど、今月の請求が全く来ないんだ。ひょっとしてスーパーで買い物してる?」
「あ、それは、その。私も食べてるので当然です」
「いや、それだと割に合わない。ちゃんと俺に払わせて」
「そんな…。ますます私の肩身が狭くなります」
「どうして?毎日こんなに美味しい食事を作ってくれてるんだ。俺ばかりが得をしてる」
「まさか!そんな…」
一向に首を縦に振らない凛に、航は業を煮やす。
「分かった。それなら今後週末は君と買い出しに行くことにする。たっぷり食料品を買いにね。俺も好きな物選びたいし。ほら、朝食食べたら早速出掛けるよ」
「え、は、はい」
凛は慌てて食事の手を進めた。
遅めに起きた航がダイニングに行くと、キッチンにいた凛が笑顔で振り返った。
「おはようございます!」
「おはよう。ごめん、寝坊した」
「いいえ。毎日お忙しいんですから、休日はゆっくりしてください。今、朝食運びますね。たまには洋食もいいかなと思って、フレンチトーストにしたんです」
「ありがとう」
夕べの木原の言葉が蘇り、なんとなく航は後ろめたくなる。
(彼女がうちで暮らしてること、内緒にしたままでいいのか?いや、話す訳にはいかないか。よく考えたらかなり非常識なことしてるもんな、俺)
同じ職場だが、凛は派遣会社に所属している為、住所が同じことは誰にも知られていない。
このまま隠し通すべきかと悩みながら食べていると、凛が恐る恐る尋ねてきた。
「あの、お口に合いませんか?」
航はハッと我に返る。
「いや、すごく美味しいよ。ふわふわでほんのり甘くて、ホテルの朝食みたいだ」
「それなら良かったです」
にっこり笑うと、凛は思い出したようにナイフとフォークを置いて居住まいを正した。
「あの、河合さん」
「ん?何?」
「先日、最初のお給料が振り込まれて、無事に実家に20万送金出来ました。本当にありがとうございました」
「そんな、俺が礼を言われる筋合いはないよ。君が働いたお金なんだし」
「いえ、全て河合さんのおかげです。本当にありがとうございます。それで、あの…。そろそろひと月経ちますが、いかがでしょうか?私をお試し頂いたご感想は…」
航はピタリと手を止める。
(私を…お試し…?)
それってどういう…?と固まっていると、凛が言葉を続けた。
「ハウスキーピングとしては、あまり良い働きぶりではなかったかもしれませんが…。なぜだかお部屋はいつもピカピカですし、料理くらいしか出来なくて」
「あ!その試用期間ね。いや、充分だよ。毎日本当にありがとう」
「では、あの、このまま続けさせて頂いても?」
「もちろん。こちらからお願いするよ」
「良かった!ありがとうございます。でもお洗濯物も、もっと出してくださいね?いつもタオルくらいしかなくて。それと、他に何か出来ることがあったら教えてください」
「これ以上は何もないよ。それより気になってたんだけど」
そう切り出すと、凛は真剣に頷く。
「はい、何でしょうか?」
「食料品のお金、もしかして君が払ってるの?タブレットで注文してって伝えたけど、今月の請求が全く来ないんだ。ひょっとしてスーパーで買い物してる?」
「あ、それは、その。私も食べてるので当然です」
「いや、それだと割に合わない。ちゃんと俺に払わせて」
「そんな…。ますます私の肩身が狭くなります」
「どうして?毎日こんなに美味しい食事を作ってくれてるんだ。俺ばかりが得をしてる」
「まさか!そんな…」
一向に首を縦に振らない凛に、航は業を煮やす。
「分かった。それなら今後週末は君と買い出しに行くことにする。たっぷり食料品を買いにね。俺も好きな物選びたいし。ほら、朝食食べたら早速出掛けるよ」
「え、は、はい」
凛は慌てて食事の手を進めた。