君との恋のエトセトラ
「お帰りなさい」

深夜の0時過ぎ。
帰宅した航は、凛に出迎えられて驚く。

「まだ起きてたの?もう真夜中だよ?」
「はい。河合さん、夕食は外で?」
「ああ。クライアントと済ませてきた」

本当は会食の予定はなく、凛と顔を合わせづらくて一人で飲んでいたのだが…。

「少しだけお夜食用意しますね」
「いや、あの…」

小さく声をかけるが、凛はくるりと背を向けてキッチンに向かった。

ため息をついてから、航は手洗いを済ませてダイニングに行く。

用意された雑炊を食べると、心の底からホッとして身体がほぐれていくのを感じた。

凛は向かいの席に座ると、意を決したように顔を上げる。

「河合さん。今日、木原さんからお話されました」

え…と、航は一気に顔をこわばらせた。

「すみません。私、散々河合さんのお世話になっておきながら、河合さんの人生に多大なるご迷惑をおかけしていたんですね。それも知らずにただ甘えてしまって…。本当に申し訳ありませんでした」

頭を下げる凛に、航はかける言葉が見つからない。

迷惑なんて、とんでもない。
心の中ではそう思っているのに。

「明日、Moonlightとの打ち合わせですよね?それが終わったら、私、ここを出て行きます」
「それは、つまり…」

あいつの所へ?というセリフを飲み込む。

引き留めたいのに何も言えない。

二人の間には、ただ冷たい沈黙が流れていた。
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