君との恋のエトセトラ
ランチを終えると航と凛はオフィスに戻り、早速クリエイティブ部に行ってデザインのイメージを伝える。

担当者は「分かりました」と言って、すぐにラフなデザインを作ってくれることになった。

Webデザイナーにも、ホームページやSNSで発信するコンテンツについて説明する。
こちらもすぐに取り掛かると言ってもらえ、凛はホッと胸を撫で下ろす。

「今後はチームを作って状況を共有していこう。君も共有フォルダからその都度連絡事項やスケジュール、デザイン案などを確認して欲しい」
「かしこまりました」
「流れとしては、広告デザインとキャッチコピーが先だな。その後にWebデザイン。ホームページでの商品紹介やSNSのコンテンツについては、大枠だけ進めておいてもらおう。商品それぞれの紹介文や価格とか、確定しているものだけを先に」
「はい。すぐに資料をまとめて共有フォルダに入れておきます」
「うん、頼む」

オフィスに戻り、デスクでやり取りしながら、航はふと凛の横顔を見つめた。
ランチの後から気になっていたのだが、いつもと随分雰囲気が違う。

(何が違うんだろう。目元、頬、唇?全部か)

知らず知らずのうちに見とれてしまい、ハッとして慌てて下を向いた。
だがすぐに、もう一度目を向けたくなってしまう。

(なぜだろう。あ、これがセレーネシリーズのメイクの魅力か。なるほど)

そう己を納得させて、心の片隅にある気持ちにフタをする。

(メイクの魅力だ。うん。彼女ではなく、セレーネの魅力)

真顔で小さく、うんうんと頷く。

その後も真剣に話し合う航と凛を、木原は離れたデスクから眺め、複雑な思いでため息をついていた。
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