君との恋のエトセトラ

第十七章 キャッチコピー

Ｍoonlightとの打ち合わせの日がやって来た。

出来れば今日、先方のOKをもらいたいところで、凛と航は緊張の面持ちでクリエイティブチームが手掛けたデザインをテーブルに置いた。

視線を落とした瞬間、梶谷と梅田はハッと目を見開く。

「これは…」

そう言った切り、じっとデザインに目を落としたままだ。

（どうなのかな？大丈夫かな？）

不安になって思わず航と顔を見合わせた時だった。

「うん、いいですね」
「ほんと！とっても素敵です」

二人の感嘆の声が聞こえ、凛はホッと肩の力を抜いた。

「一瞬、広告とは思えなかった。とにかく目が釘付けになって、そのうちにだんだんと興味が湧いてきたよ。そこからようやく下に目を移して、なるほどメイクの世界観なのだと気づいた」
「そうですよね。シックなベースカラーに浮かび上がる女性の伏し目がちな表情。振り向かせたい。この女性はどうしてこんなに魅力的なんだろう。どうやったらこんな雰囲気を出せるんだろうって、商品の説明をじっくり読んでしまいます」

梶谷と梅田は興奮気味に顔を寄せて、デザインに夢中になっている。
凛と航も互いに笑顔で頷き合った。

ようやく梶谷達が落ち着きを取り戻すと、具体的な修正部分を聞き出して書き込んでいく。

「この文字はもう少し右に寄せて、バランスを整えてみてください」
「かしこまりました」
「それと『Selene』のフォント。もっと他にありますか？いくつか候補を見てみたいです。大事な商品名ですから、イメージに合った文字にしたい」
「はい。早急にデザイナーに伝えます」
「あとはやっぱりキャッチコピーですね」

はい、と航も凛も大きく頷く。

デザインはある程度仕上がったが、コピーライターがいくつか挙げたキャッチコピーは、どれもピンと来なかった。

今はひとまず一番良さそうなものを入れておいたが、やはり梶谷も梅田も反応はイマイチだ。

「ここまで良いデザインだと妥協したくなくなる。ぜひとも、これだ！と思える文句を考えて頂きたい」
「承知致しました。わたくし共も自信を持ってご提案出来るよう、持ち帰って案を練り直します」
「ああ、よろしく頼むよ」

やるべきことはまだまだあるが、凛は必ず良いものを作り上げようと心に決めた。