君との恋のエトセトラ
皆がご機嫌でグラスを掲げる中、航はチラリと左隣の凛の様子をうかがった。

(まだあどけないな。学生さん?いや、派遣社員だから違うか。それにしても若い子だな)

お酒を飲むのも慣れていないのだろう。
頬は真っ赤で、目も心なしか潤んでいる。

アルコールに強い営業マン達がここまでご機嫌に出来上がっているのだから、既に彼女も何杯も飲まされたに違いない。

航はグラスを左手に持ち替えると、右手をテーブルの下から左に伸ばしてそっと彼女の右手を押さえた。

ん?とわずかに首をかしげている横で一気にグラスを飲み干すと、彼女が手にしていたグラスを取り、素早く自分のグラスとすり替える。

驚いたように目を丸くして手にしたグラスを見つめ、パチパチと瞬きを繰り返しているその姿に、航はクスッと笑みを洩らした。
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