君との恋のエトセトラ
いつの間にかウトウトとまどろんでいたらしい。

凛が目を覚ますと、すぐ近くに航の姿があった。

ソファにもたれて床に座り、ローテーブルの上でパソコンを操作している。

凛はその横顔をじっと見つめた。

(男の人が真剣に仕事してる顔って素敵だな。いや、河合さんなら何やっててもカッコイイか。サラッとおでこに流れる前髪も、なんだか大人の色気があって…)

無言で見つめ続けていると、ふと航が振り返った。

「わっ!びっくりした。起きてたのなら教えてよ」
「今起きました」
「嘘だね。さっきからなんか視線を感じてたもん」
「それなら河合さんこそ、すぐに教えてくださいよ」
「ほんとにもう…。減らず口は絶好調だね」
「身体ももう絶好調ですよ。それより、食料品は届きましたか?」
「ああ、冷蔵庫に入れてある。何か食べる?」

キッチンに向かう航に、凛も起き上がってついていった。

「持っていくから、横になってて」
「そろそろ縦にならないと身体が痛くて」
「縦になる?あはは!」

笑いながら航が開けた冷蔵庫から、凛は手際良く食材を取り出す。

「え?ちょっと、何をする気?」
「料理をする気です」
「ダメでしょ?まだ寝てないと」
「お腹が空いて寝られません」
「じゃあ俺が作るから」
「塩だけ入れて?」

うぐっと航は妙な声を上げる。

「ねえ、なんか性格変わった?」
「そうかも。熱のせいかな?」
「ヤレヤレ。たくましくなったね」
「でないと世の中やっていけませんしね」

軽く航をあしらいながら、凛はテキパキと鍋焼きうどんを作った。

「はい!具だくさんの味噌煮込みうどんです。みそ味ですよ、みーそ」
「分かったよ。そんなに何度も言わなくても…」
「さ、食べましょ!」

ダイニングで、いただきますと手を合わせてから二人で食べる。

「はあー、旨い!五臓六腑に染み渡るー」
「ふふふ。河合さん、その様子じゃかなり不摂生な毎日でしたね?」
「仕方ないよ。男の一人暮らしだもん」
「身体壊さないように気をつけてくださいよ?」
「それはこっちのセリフでしょ!」

二人でペロリと平らげると、食後にアイスクリームを食べる。

再び航に「早く寝て」と急かされた凛は、シャワーを浴びると航から借りた部屋着を着た。

「わあー、ブカブカ」

両手を広げて笑う凛に、航は心が痛む。
どう見ても以前よりやつれていた。
< 98 / 168 >

この作品をシェア

pagetop