花森課長、もっと分かりやすく恋してくれませんか?
 課長はねっとり耳元で語り、太腿にタッチしてきた。それが課長を異性として認識するスイッチとなり今更の危機感が芽生え、身を捩る。

「課長も結局、好きでもない女性としちゃえる人なんですね! もっと紳士で理性がある方だと!」

「私も性欲が枯れている訳じゃないんです。香さん、ご自分の危機管理がなっていないくせ、私にそんな人ではないと訴えるのは調子が良いですよ」

 ごもっともだ。経理課長という役職柄、清廉潔白なイメージを持ってしまって。

 際どい箇所をさらりと撫でては私の出方を窺う。たとえ嫌がろうと組み敷いてしまえる手管を感じ、強張る。

「今度は私が聞く番です。あなたは面食いだとか? 私はいかがです? 自分で言うのもなんですが悪くはないと思ってます」

 喉元へ唇を触れるか、触れないかギリギリに寄せ、囁く。甘く吹き掛けられた場所から身体が熱くなった。

「じ、自信があるなら、わざわざ聞かなくても。私なんか相手にしなくたって……」

 誤魔化そうと声が上ずって、問に肯定しているみたいなもの。ついにベッドの縁まで追い込まれてしまった。

「あなたこそ、急にしおらしくしないて下さい。ずるいです、なんだかいけない事をしている気分になります」

「いや、充分いけない事だと思いますが?」

「ーー何故?」

「な、何故って、私達……」

 私達に続く関係性が浮かばない。

「では本当にいけない事なのか、試してみましょう」
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