花森課長、もっと分かりやすく恋してくれませんか?
 キングサイズのベッドがある寝室、最新家電が配備されたキッチンといい、潤沢な資産があってこそ。ヘッドハンティングされてないそうだが、それでもこの生活を維持する給料を宮田工業は払っているはず。私の賃金格差は相当だ。

 だけど、花森課長が私を技術者と呼んだのは説教のパーツだとしても嬉しくもあって。買い物についてくるのを完全に拒否しない程度には心に響く。

 花森課長は私がどんな仕事をしているのか興味がない、社長の娘という側面からしか接してこないと思い込んでいた。

 二人同時に入る事も可能なバスルームでワンピースと課長への偏見を払う。

(二人で入る? いやいや、ないない)

 熱いシャワーを浴び、かぶりを振る。

(根拠に基づいた判断、ねぇ)

 面白い挑発だ。いいだろう、課長の本心を暴いてやる。昨夜つけられたキスマークの前で拳を握った。
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