【第二部】天妃物語 ~「私以外にもたくさん妻室がいた天帝にお前だけだと口説かれます。信じていいのでしょうか」~
呪いといえば藁人形
天上界。それは神域の森の入口にありました。
「呪いの藁人形……。困った物を見つけてしまいましたね……」
思わぬものを見つけて目をぱちくりしてしまう。
控えていた女官たちもざわめいて、私の視界から藁人形を隠してくれました。
藁人形は天上でも地上でも呪物として扱われているのです。
「天妃様、大変失礼をいたしました」
「このような忌物を天妃様の目に触れさせてしまったこと、どうかお許しください」
そう言って女官たちが地面に平伏しました。
天妃である私の警備体制は厳重なものでなくてはならないので、私の行く先にこのような忌物があるのは彼女たちの落ち度です。
……こういう時、少し困ります。間違いや落ち度は誰にでもあることなので軽く許したいところですが、私の立場がそれを許さないのですから。
でも仕方がありません。私は厳しい顔を作りました。
「このような不手際をされては不快です。今から神域の森へ入るというのに……」
「申し訳ありませんでした!」
「どうかご容赦ください……!」
女官たちは恐縮してますます地面に平伏します。
今すぐ立たせて衣装についた土や砂を払ってあげたいけれど、ぐっと我慢。でも叱って対面は保たれたのでもういいですよね。
「まあいいでしょう。今回のことは不問としましょう。幸いこの藁人形からは邪気を感じません。邪気がなければただの藁の束。これは藁人形ではなく、藁の束が木に打ち付けてあっただけのもの」
「ありがとうございます!」
女官たちにほっと安堵が広がりました。
私は頷いて女官たちを立たせます。
「みな立ちなさい。この藁の束のことを私は忘れます。みなも忘れるように」
実際、藁人形から邪気を感じません。
いつから藁人形が木に打ち付けてあったのか分かりませんが、邪気がなかったので誰も気づかず見過ごしていたのでしょう。
「では行きましょう」
私は女官たちの集団を引き連れて神域の森の入口へ向かいました。
神域の森の入口で女官たちは待機です。
「それではここでお待ちしています。いってらっしゃいませ」
「はい、では行ってきます」
私は一人で森の中へ入っていく。
天上界ではつねに天妃の私には護衛や世話役の女官たちが控えていますが、この神域は天帝の血筋と天妃の私しか立ち入ることは許されない禁足地なのです。
ここはある意味、天上界で私が唯一一人になれる場所といってもいいでしょう。
でも私がここに来た目的は一人になるためではありません。
「さあ、今日も地上を見守らなければ」
私は張り切って森の奥にある池に向かいました。
そう、私の目的地は神域の森の奥にある池。この池は地上と繋がっていて、天上界にいながら地上の世界を見ることができるのです。
人間として地上で暮らしていた私にとって地上は第二の故郷のようなもの、安寧を願うのは当然ですよね。
そしてなにより地上には双子の妹である萌黄がいるのです。姉である私がしっかり見守ってあげなければ。
「呪いの藁人形……。困った物を見つけてしまいましたね……」
思わぬものを見つけて目をぱちくりしてしまう。
控えていた女官たちもざわめいて、私の視界から藁人形を隠してくれました。
藁人形は天上でも地上でも呪物として扱われているのです。
「天妃様、大変失礼をいたしました」
「このような忌物を天妃様の目に触れさせてしまったこと、どうかお許しください」
そう言って女官たちが地面に平伏しました。
天妃である私の警備体制は厳重なものでなくてはならないので、私の行く先にこのような忌物があるのは彼女たちの落ち度です。
……こういう時、少し困ります。間違いや落ち度は誰にでもあることなので軽く許したいところですが、私の立場がそれを許さないのですから。
でも仕方がありません。私は厳しい顔を作りました。
「このような不手際をされては不快です。今から神域の森へ入るというのに……」
「申し訳ありませんでした!」
「どうかご容赦ください……!」
女官たちは恐縮してますます地面に平伏します。
今すぐ立たせて衣装についた土や砂を払ってあげたいけれど、ぐっと我慢。でも叱って対面は保たれたのでもういいですよね。
「まあいいでしょう。今回のことは不問としましょう。幸いこの藁人形からは邪気を感じません。邪気がなければただの藁の束。これは藁人形ではなく、藁の束が木に打ち付けてあっただけのもの」
「ありがとうございます!」
女官たちにほっと安堵が広がりました。
私は頷いて女官たちを立たせます。
「みな立ちなさい。この藁の束のことを私は忘れます。みなも忘れるように」
実際、藁人形から邪気を感じません。
いつから藁人形が木に打ち付けてあったのか分かりませんが、邪気がなかったので誰も気づかず見過ごしていたのでしょう。
「では行きましょう」
私は女官たちの集団を引き連れて神域の森の入口へ向かいました。
神域の森の入口で女官たちは待機です。
「それではここでお待ちしています。いってらっしゃいませ」
「はい、では行ってきます」
私は一人で森の中へ入っていく。
天上界ではつねに天妃の私には護衛や世話役の女官たちが控えていますが、この神域は天帝の血筋と天妃の私しか立ち入ることは許されない禁足地なのです。
ここはある意味、天上界で私が唯一一人になれる場所といってもいいでしょう。
でも私がここに来た目的は一人になるためではありません。
「さあ、今日も地上を見守らなければ」
私は張り切って森の奥にある池に向かいました。
そう、私の目的地は神域の森の奥にある池。この池は地上と繋がっていて、天上界にいながら地上の世界を見ることができるのです。
人間として地上で暮らしていた私にとって地上は第二の故郷のようなもの、安寧を願うのは当然ですよね。
そしてなにより地上には双子の妹である萌黄がいるのです。姉である私がしっかり見守ってあげなければ。