【第二部】天妃物語 ~「私以外にもたくさん妻室がいた天帝にお前だけだと口説かれます。信じていいのでしょうか」~
「おでかけだぞ、せいらん。みんなでおでかけ。きないにいくんだ」
「あう?」
「お・で・か・け」
「……。あー、あうあ〜」
「ちがう〜。おでかけ! きないめぐり!」
「ばぶぶっ、あうー」
青藍は紫紺の真似をしようとしますがやっぱり難しいですよね。
「ふふふ、それくらいにしておいてあげてください。青藍はまだ赤ちゃんですからね」
「せいらんはしかたないな~」
呆れた様子の紫紺に私はクスクス笑います。
青藍を膝に抱っこして紫紺の頭をよしよししてあげました。
「――――賑やかだな。なにかありましたか?」
ふと花緑青の声がしました。
ようやく帰宅したのですね。花緑青が黒緋に挨拶します。
「兄上、ただいま帰りました」
「ずいぶん遅かったな。腹が減っているならなにか用意させるが」
「お気遣い痛み入ります。しかし出先で軽くいただいてきたので」
「そうか、なら晩酌に付き合ってくれ」
「はい、喜んで」
花緑青はにこやかにそう言うと黒緋に足を向けます。
でも、ふわり。私の近くを通った時に仄かな香の薫りが漂いました。
これは移り香ですね。きっと仕事の帰りにどこぞの女人のところに寄っていたのでしょうね。
花緑青はふと私の前で立ち止まりニコリと微笑みます。
「義姉上、どうしました?」
「いいえ、こんな遅くまでご苦労様です。繁盛しているのですね」
「おかげさまで」
丁寧にお辞儀して黒緋の隣に腰を下ろしました。
花緑青は黒緋の前では可愛げのある弟になるのです。
女官が花緑青の酒器を運んできました。
紫紺と青藍も叔父の帰宅にはしゃぎだします。
「はなろくしょう、おかえり! あしたはきないめぐりなんだ!」
「ばぶぶっ。あい~」
「畿内巡り? 兄上、畿内巡りへ行くんですか?」
「ああ、急だが鶯と子らを連れて明日から行ってくる。お前も来るか?」
「お誘いありがとうございます。せっかくですが、明日は公卿から相談に乗ってほしいと頼まれていまして」
「そうか、お前のみくじは当たるからな。お前の評判は俺の耳にも届いているぞ」
「陰陽寮の方々に噂していただけるとは恐悦至極」
そう言って花緑青は酒を煽ります。
語らう黒緋と花緑青の隣では紫紺と青藍も楽しそうにおしゃべりです。
「あう?」
「お・で・か・け」
「……。あー、あうあ〜」
「ちがう〜。おでかけ! きないめぐり!」
「ばぶぶっ、あうー」
青藍は紫紺の真似をしようとしますがやっぱり難しいですよね。
「ふふふ、それくらいにしておいてあげてください。青藍はまだ赤ちゃんですからね」
「せいらんはしかたないな~」
呆れた様子の紫紺に私はクスクス笑います。
青藍を膝に抱っこして紫紺の頭をよしよししてあげました。
「――――賑やかだな。なにかありましたか?」
ふと花緑青の声がしました。
ようやく帰宅したのですね。花緑青が黒緋に挨拶します。
「兄上、ただいま帰りました」
「ずいぶん遅かったな。腹が減っているならなにか用意させるが」
「お気遣い痛み入ります。しかし出先で軽くいただいてきたので」
「そうか、なら晩酌に付き合ってくれ」
「はい、喜んで」
花緑青はにこやかにそう言うと黒緋に足を向けます。
でも、ふわり。私の近くを通った時に仄かな香の薫りが漂いました。
これは移り香ですね。きっと仕事の帰りにどこぞの女人のところに寄っていたのでしょうね。
花緑青はふと私の前で立ち止まりニコリと微笑みます。
「義姉上、どうしました?」
「いいえ、こんな遅くまでご苦労様です。繁盛しているのですね」
「おかげさまで」
丁寧にお辞儀して黒緋の隣に腰を下ろしました。
花緑青は黒緋の前では可愛げのある弟になるのです。
女官が花緑青の酒器を運んできました。
紫紺と青藍も叔父の帰宅にはしゃぎだします。
「はなろくしょう、おかえり! あしたはきないめぐりなんだ!」
「ばぶぶっ。あい~」
「畿内巡り? 兄上、畿内巡りへ行くんですか?」
「ああ、急だが鶯と子らを連れて明日から行ってくる。お前も来るか?」
「お誘いありがとうございます。せっかくですが、明日は公卿から相談に乗ってほしいと頼まれていまして」
「そうか、お前のみくじは当たるからな。お前の評判は俺の耳にも届いているぞ」
「陰陽寮の方々に噂していただけるとは恐悦至極」
そう言って花緑青は酒を煽ります。
語らう黒緋と花緑青の隣では紫紺と青藍も楽しそうにおしゃべりです。