続・小さな恋のメロディ~貴方が好きです~
荷物を抱えて辿り着いたのは、哲平の家でもなければマリナの家でもない。
実家だ。

この家の匂いも、少しだけ年老いたママも、懐かしい気がした。


「鳴海さんとやり直す気があるのなら、余り長く居たらダメよ?」

「…うん」


事情を知っているだろうママは、何も聞かない。


「部屋に行くね…」


私はそう言って部屋に入る。

ねぇ、鳴海…。
何で他の女と心中自殺なんてしようとしたの?


帰りたくなかった…?

私は声を押し殺して、思いきり泣いた。


その涙は、鳴海の裏切りがショックなのか、妻としてのプライドを傷つけられた悔しさなのか、解らない……。


翌日高橋から、鳴海が目を覚ましたと電話があった。

退院は一週間後。
病院に来るように言われたけど、私は行かない。

だって、どんな顔をして会えばいいの?


ボンヤリとする私を見て、私の気持ちを見抜いたようにママが言った。


「お見舞いに行かないの?」

「…うん」

「鳴海さんの事が、許せない?」

「……?」

「貴女にある感情が、悲しいだけじゃなく、憎いとか、悔しいでもいいの。相手に無関心なら、そんな気持ちさえ沸かないわ」


< 58 / 128 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop