こめかみに銃口
夢現 - ゆめうつつ -
――ぱちん。
しゃぼん玉が弾けるように。
あるいは泡沫が刹那的に消えるように、目が覚めた。
ここは、どこ?
白い……部屋?
まだ夢の中にいるのかと思うくらい、清廉潔白な色が部屋を象っている。
もしかしたらここは、天国かなにかかも。
だって、温かいしやわらかいし。ふわふわしていて、こっちまで優しい気持ちになるような、なにかに包まれているんだもの。
いいかもしれない。このまま天国にいたら〝あの人〟に会えるかもしれないし――。
「……っ!」
はっとして、わたしは飛び起きた。
目が覚めた瞬間に、自分がベッドの上にいることはわかっていた。本気でここが天国だと思っていたわけじゃない。
けれど、こんなにふわふわした布団には入ったことがなくて、大の字になっても十分なくらい広々としたベッドに寝たこともなくて。
もうちょっとこのエセ天国気分を味わっていたかったんだ。
なのに、突如、視界の端に人影が現れて、わたしは飛び起きずにはいられなかった。
正確には、その人影はずっとそこにいたらしい。わたしが気づいたのが今しがた。
自分ひとりしかいないと思っていたこの空間に。
「お目覚めですか、お姫さま」
卑しい笑みを口元に作る男がいるなんて――思いもしなかった。