こめかみに銃口

「さて、と」


ぎしり。男が腰を下ろしたことでベッドが軋んだ。

わたしはつい、かけ布団を胸の前で握りしめた。


「こっちの冗談はさておき。そっちの冗談はなんのつもり?」


冗談じゃないって言ったのに。信じてもらえなかった。

男の目が冷たくわたしを見据える。氷みたいに冷たい目だ。


「俺から逃げられないのは、ちゃんと知ってるよね」

「……知らない。だれ、あなた」


再度だれかと尋ねると、今度はあからさまに眉根を寄せた。


「……へえ。憶えてないんだ」


口角は上がっているのに、目が全然笑ってない。

よく見るとすごくきれいな顔をしているけど、なんだかそれがかえって不気味だった。


ぎしり。
ベッドが音を立てる。


男がベッドに全身を乗っけて、這うようにわたしのもとまでやってきた。

きらりと輝く刃のような目が、わたしをまっすぐにとらえる。

目が、はなせな……。


「……んっ」


ぼーっと(ほう)けているあいだに、唇を塞がれてしまった。

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