【中編版】スパダリ煎茶家は、かりそめ令嬢を溺愛包囲して娶りたい。
「わかったよ。言いにくいことを言ってくれてありがとう」
「……いえ、そんなことは」
「そうだな、もう親父さんのいない【お菊】で働くことはできない。金もないし、店を営業すれば、売れば売るほど赤字になっていくだろうな。だから、俺は他の店に働きに出る。悪いんだけど、千愛ちゃんもアルバイトでいいから働いてほしい」
「それはもちろんです。そのつもりでした。だけどいいんですか? もし、瑛一さんが婚約を解消してここを出て行くならそれを止める資格はないと思っていて」
「俺は出て行かないよ。親父さんにはとてもお世話になったんだ……恩を返したいと思ってるから」
そんなふうに思ってくれているのが嬉しくて、私は泣いてしまいそうになる。泣きそうになりながら「ありがとうございますっ」とお辞儀をした。