【中編版】スパダリ煎茶家は、かりそめ令嬢を溺愛包囲して娶りたい。
第2章
◇お嬢様になりました。
「……こんなところかな」
私は、今日この家を出る。小さな頃から住み慣れた家であり両親が愛したお店を出るんだ。
荷物はキャリーケースと二つのダンボールに詰めた。それと手持ちカバンだけ。
お店で使っていた和菓子の道具は売りに出すことにした。もう瑛一さんがいないから作る人もいないしこんなところで埃をかぶってしまうより、違う誰かのもとに渡って大切に使ってもらえたらと思った。
幸いなことにまだ買い替えてすぐだったし新品同様だから結構ないい値段にしていただいた。
……それにこの家。この家は、両親が買った家だ。だけど、このまま放置じゃ可哀想だと思ったので売却ではなく【貸家】にして、貸出という形にした。
まだ決まってはいないけど、由良乃さんが色々手配してくださるそうだ。なので心配事はほとんどない。
迎えに来てもらうのでそれまでは家の掃除をした。ピカピカにして、玄関も掃除してお礼で正座をする。
「ありがとうございました」
お辞儀をしてキャリーケースなどを順番に二階から下に下ろすとインターホンが鳴った。
きっと由良乃さんだと思い、出る。