【中編版】スパダリ煎茶家は、かりそめ令嬢を溺愛包囲して娶りたい。
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家から出て一時間。私は、高級住宅街に立ち並ぶなんとも大きな豪邸の前に立っていた。
「すごい」
「思った通りの反応。ここはお祖母様の趣味全開の家だ。一応、由良乃家の本家だよ」
へぇ……そうなんだ。すごい。
そして、和成さんの口調がゆるい。さっきまで堅苦しい仕事ができそうな男性だったのに今は物腰が低くて優しいお兄さんという感じだ。
「さぁ、行こう。お祖母様がお待ちかねだ」
「はい。あの、荷物は……」
「あぁ、使用人が運ぶから気にしないで。大丈夫」
そうなんだ……すごい世界なんだな。別世界だ。
中に入れば、使用人の方々が並んでいて「おかえりなさいませ、和成さま」と一斉にお辞儀をした。
圧巻だ。
「初めまして、ここの執事長をしております幾島と申します」
「こちらこそ初めまして、千愛です。お世話になります。よろしくお願いいたします」
執事長の幾島さんは「はい」と返事をすると、由良乃さんのいるであろう部屋に案内してくださった。