【中編版】スパダリ煎茶家は、かりそめ令嬢を溺愛包囲して娶りたい。



 由良乃さんがいらっしゃるリビングは、玄関から続いている回廊の曲線を引き継ぐように美しい曲線がゾーニングされている。

 心の中でキョロキョロしてしまう。


「……ふふ、ようこそ。千愛さん」

「あっ、すみません。由良乃様。本日からお世話になります」

「えぇ、よろしくね。もうあなたも由良乃になるのですから苗字よびはおかしいわよ。そうね……お祖母様でいいのよ」


 そうだよね、さっき書いたんだもの……一度心の中で練習するように「お祖母様」と言ってから声に出す。


「お、お祖母様」

「ぎこちないけど、合格ね。まぁ、これからいっぱい呼んでちょうだいな……そう、そう。とりあえず座ってちょうだい。スイーツを用意したのよ」



 後ろに控えていた使用人の方が椅子を引いてくださってそれに座った。

私は「ありがとう」と言うと、彼女は照れたように微笑んで先ほどと同じように後ろに下がった。


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