【中編版】スパダリ煎茶家は、かりそめ令嬢を溺愛包囲して娶りたい。
紹介をしてくださったので私は「由良乃千愛と申します」と言い、お辞儀をした。
「……では、話が長くならないうちに乾杯をいたしましょう」
そう言うと、それが号令になったようにウェイターさんが飲み物を持ってきて私たちに手渡した。
「それではいいでしょうか? 乾杯」
そうマイクなしで彼女が言えば、皆が軽くグラスを持ち上げた。すると、後ろの方にいたメディアの方が一斉にフラッシュを押した。
そうしてパーティーは始まったのである。
壇上から降りると、お祖母様とは別れて和成さんと挨拶に向かう。
ほとんどが由良乃製茶の取引先の方だ。でも時々、懇意にしていただいている政治家さんに挨拶はとても緊張した。
「……疲れていないかい?」
「はい。お従兄様……大丈夫と言いたいのですが少しだけ疲れました」
「それはそうだろう。慣れない初めての場であんだけ注目されれば仕方ない。初めてなのにとても堂々としていて令嬢にしか見えなかったよ」
「本当? よかった」
安心していると「千愛、少しここで待っていてもらえる?」と和成さんに言われたので私は頷いてから「大丈夫です」と答えた。
和成さんはごめんというポーズをして中心の方へ行ってしまったので壁の方でくっついた。
ウェイターさんから頂いたドリンクを飲みながら会場内を見ているとここで呼ばれるはずもない名前で呼ばれる。