【中編版】スパダリ煎茶家は、かりそめ令嬢を溺愛包囲して娶りたい。



 ***


「……では、こちらでお待ちください」


 仲居さんは襖を閉めてどこかに行ってしまった。
 料亭【湊】にやってきた私たちは、まだ大宮さんは来ていないらしく待つことになった。
 だけど、お忙しいと思うし仕方ないわよね。


「千愛、顔強張ってるわよ」

「えっ、嘘……どうしよう」

「ふふ、うそよ。だけど、そんな暗い顔しないで笑って。笑ってればなんとかなるわよ」


 緊張してるんです……笑うのは大変です。めちゃくちゃ緊張してます。

 こんな料亭は初めてだし、初体験の食事会だし。

 まぁ……お見合いだから初めてで仕方ないんだけど。


「……がんばります」



 頑張って口角を上げなくちゃ、と思っていると襖の向こうから「失礼致します。大宮様がいらっしゃいました」と聞こえて背筋が伸びた。
 そして入ってきたのは、大宮さんと大宮さんによく似たダンディーな男性……きっとお父様だろうと思われる人だ。


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