【中編版】スパダリ煎茶家は、かりそめ令嬢を溺愛包囲して娶りたい。
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「……では、こちらでお待ちください」
仲居さんは襖を閉めてどこかに行ってしまった。
料亭【湊】にやってきた私たちは、まだ大宮さんは来ていないらしく待つことになった。
だけど、お忙しいと思うし仕方ないわよね。
「千愛、顔強張ってるわよ」
「えっ、嘘……どうしよう」
「ふふ、うそよ。だけど、そんな暗い顔しないで笑って。笑ってればなんとかなるわよ」
緊張してるんです……笑うのは大変です。めちゃくちゃ緊張してます。
こんな料亭は初めてだし、初体験の食事会だし。
まぁ……お見合いだから初めてで仕方ないんだけど。
「……がんばります」
頑張って口角を上げなくちゃ、と思っていると襖の向こうから「失礼致します。大宮様がいらっしゃいました」と聞こえて背筋が伸びた。
そして入ってきたのは、大宮さんと大宮さんによく似たダンディーな男性……きっとお父様だろうと思われる人だ。