【中編版】スパダリ煎茶家は、かりそめ令嬢を溺愛包囲して娶りたい。
私は玄関を上がり、廊下をまっすぐに進む。突き当たりに小さな和室がありそこが更衣室だ。そこで浴衣に着替える。浴衣はくすんだピンク色に繊細なラインで百合の模様が描かれていてモダンでエレガントな雰囲気の浴衣だ。
それにベージュの半帯をして荷物をまとめて更衣室を出る。更衣室から出て左を曲がれば稽古室の和室に入室をする。
「いらっしゃい〜じゃあ、始めましょうか」
私はいつものように畳に座り、扇子を前に置いた。
そして背筋を伸ばし、肩甲骨をつける。
肩を落として顎を引くと、ゆっくりと前へ手をついて一旦止めて「よろしくお願いします」と言いながら肘を床までつけて頭を下げた。
「うん、ここ肘を張りすぎないで膝を囲うようなイメージでお辞儀ね」
「……はいっ」
そしてゆっくりと頭を上げて肘を伸ばした形で止めて息を止め、吐くとゆっくりと手を戻して最初の姿勢にと戻る。
「前よりも良くなって来たわね。すごいわ……では、次に扇子の使い方ね」