【中編版】スパダリ煎茶家は、かりそめ令嬢を溺愛包囲して娶りたい。
一旦、瑛一さんに帰ってもらって休むように伝えたので今はひとりきりだ。
婚約者だとはいえ、父が亡くなってお葬式とかを整えてくださったり手続きもしてくれた。なにもかも任せてしまっていた。
「はぁ……なんだかいっぱいあるわね」
私は父の部屋に入ると、棚に入っているものを出した。
古い書物や古い和菓子作りに使う道具がたくさん出てきた。少しかけたりしているからもう使えないけど、お父さんにとっては我が子のようなものだったらしくて捨てられないと言っていた。
「けど、当の本人はいないし……どうしよう。瑛一さんとも相談しないと」
それから、段ボールを持ってきて【いらないもの】【要検討】【いるもの】と書いて分けた。いらないものがたくさん出てきたのにも驚いたが、昔お父さんがやっていたらしい煎茶道の道具が出てきた。