愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
 まあ、父がこれほどの反応を見せるのも理解はできる。
 私たち夫婦はこれから新婚旅行に行く……というわけではなく、外交官として働く千隼さんについて、新たな勤務地となるベルギーに向かうところだ。

 この海外赴任はあらかじめわかっていた話で、私も父もそれを承知の上で結婚を決めた。
 年単位の勤務になるのは確実だろうし、彼の多忙さを考慮すると帰国もままならないかもしれない。

 今までずっと一緒に暮らしてきた父娘が離れ離れになり、しかも簡単に会えない遠距離で暮らす。
 さすがに親離れ・子離れはできているつもりだが、やはり不安や寂しさが付きまとう。

「たくさんメールを送るし、電話もかけるからね。お父さんも返してくれると、私も安心だわ」

 少しでも慰めになればと、結婚が決まって以来、幾度も繰り返してきた言葉をあらためて父に伝えた。

「ああ、そうしてくれると父さんも安心だ」

 外交官としては千隼さんの先輩でもある父は、その職務の大変さも帯同する家族の苦労も十分に理解している。
 だから私たちの門出を祝福しつつも、慣れない海外で新婚生活をスタートさせることを心から案じてくれているのだ。

 同じように、私も残していく父らを心配している。
 仕事に関しては信頼できる父だが、生活面では少しばかりルーズなところがある。これまでは私が支えてきたけれど、今後はすべて自分でやってもらわなければならない。

 本当に大丈夫だろうかと不安は尽きず、助けを求めるようにこっそり祖父に視線を送る。
 目の合った祖父がしっかりうなずき返してくれるのを見て、密かにほっとしたのは父には秘密だ。
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