愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
「先輩のお母様も、もったいないくらいの話だってずいぶん喜んでいらっしゃったわ」

 彼女の言葉を信じるなら、義母は山科さんを認めていたらしい。
 私と義母は一度しか顔を合せる機会がなくて、正直なところ自分がどう思われているかまではわからない。にこやかに接してくれたし、拒否はされていないと信じたい。

 彼女の口ぶりから、もしかしたら実家を行き来するような関係にもあったのかもしれないとまで考えてしまう。

「お父様もいい話だと喜んでくださっていたのよ。ただ、早すぎるとも言われてね。仕事に就いて、経験を積んでからにしたらどいうかと提案されて、仕方なく従ったのよ」

 そこで義父が待ったをかけていなかったら、ふたりは本当に結婚していたのかもしれない。

 山科さんはとても綺麗な女性で、千隼さんと同じ大学なら国内でもトップレベルの学校を卒業している優秀な人でもある。
 ふたりが並んだ姿を想像すると、美男美女でとにかくお似合いだ。

 おまけに千隼さんと同じく外務省に勤めているのだから、仕事への理解も深く、公私とも支えられる。

 彼に不釣り合いな自分と比べて、その歴然とした差に気分が沈む。

 私と彼女は、なにもかもが違う。
 本来なら、山科さんこそが千隼さんの妻になるべきだったのではないか。

 気分転換にと誘われて来たはずなのに、こんな話を聞かされるとは思ってもみなかった。
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