愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
「千隼さん、今日はおひとりじゃないんですね」
はじめて人を連れて行った俺を見た小春さんは、いつものように微笑みながら迎え入れてくれた。
「こんばんは。高辻さんの部下の櫛田です」
愛想のいい櫛田が、小春さんに向けて朗らかな笑みを見せる。それが、なんだか気に食わない。
「こんばんは。こちらへどうぞ」
案内された席に着く。
櫛田は店内に飾られた酒瓶を、興味深そうに見回していた。中には希少なものもあったようで、「すごい」と小声でつぶやいている。
「なににしましょう?」
「今日の一品と……合うお酒ってどれだろうか」
店内の掲示には、今日は揚げ出し豆腐がお薦めとあった。
日本酒の知識はそれほどなくて、メニューの説明を見ながら頭を悩ませる。
「そうですね。お料理があっさりとした味つけなので、吟醸系の日本酒で……」
まさか小春さんから返答があるとは思わず、はっと顔を上げる。そうして、真剣な顔つきで思案する彼女を遠慮なく見つめてしまった。
「王道の久保田もいいですし、ああ、喜久泉なんかも合いそうです。先日、祖父が青森へ行った際に仕入れてきたんですけど、香りが華やかなお酒なんですよ」
「じゃあ、それを飲んでみようかな」
「ありがとうございます」
具体的な情報を提供できるのは、彼女も試飲したからだろうか。
喜久泉は彼女が勧めてくれた通りの美味しいお酒で、料理との相性もよかった。
人を連れているのもあり、小春さんとの〝内緒ですよ〟のやりとりはない。
あれは俺だけに対するサービスだったと、そこに優越感を抱いている自分に気づいたのは店を出た後だった。
はじめて人を連れて行った俺を見た小春さんは、いつものように微笑みながら迎え入れてくれた。
「こんばんは。高辻さんの部下の櫛田です」
愛想のいい櫛田が、小春さんに向けて朗らかな笑みを見せる。それが、なんだか気に食わない。
「こんばんは。こちらへどうぞ」
案内された席に着く。
櫛田は店内に飾られた酒瓶を、興味深そうに見回していた。中には希少なものもあったようで、「すごい」と小声でつぶやいている。
「なににしましょう?」
「今日の一品と……合うお酒ってどれだろうか」
店内の掲示には、今日は揚げ出し豆腐がお薦めとあった。
日本酒の知識はそれほどなくて、メニューの説明を見ながら頭を悩ませる。
「そうですね。お料理があっさりとした味つけなので、吟醸系の日本酒で……」
まさか小春さんから返答があるとは思わず、はっと顔を上げる。そうして、真剣な顔つきで思案する彼女を遠慮なく見つめてしまった。
「王道の久保田もいいですし、ああ、喜久泉なんかも合いそうです。先日、祖父が青森へ行った際に仕入れてきたんですけど、香りが華やかなお酒なんですよ」
「じゃあ、それを飲んでみようかな」
「ありがとうございます」
具体的な情報を提供できるのは、彼女も試飲したからだろうか。
喜久泉は彼女が勧めてくれた通りの美味しいお酒で、料理との相性もよかった。
人を連れているのもあり、小春さんとの〝内緒ですよ〟のやりとりはない。
あれは俺だけに対するサービスだったと、そこに優越感を抱いている自分に気づいたのは店を出た後だった。