愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
 彼が帰ってくる当日になり、いち早く迎えようと空港へ向かう。

 千隼さんは、私を見てどんな顔をするだろうか。
 別居になってしまったのは仕方がなかったのだと、優しい笑みですべてを許してしまうのか。それとも不満をあらわにするのか。

 この二年間、連絡は途切れずに続いていた。
 時差があるためリアルタイムで話をする機会は少なかったが、彼の方から私を責める言葉はひと言も出ていない。
 それどころか、とにかく私の実家を気にかけて、その上で『早く会いたい』『一緒にいたい』と気持ちを伝えてくれた。

 会いたいのか、会いたくないのか。そう問われたら、会いたいに決まっている。

 けれど、役に立てていない後ろめたさもあって、顔を合せるのが少し怖い。

 表情のこわばりを隠せないまま、空港内を足早に進む。
 今日は天気が良好で、気持ちのよい青空が広がっていた。運行状況に乱れもなく、おそらく千隼さんの乗った便も定刻通りに到着するだろう。

 到着ロビーに着いて時間を確認したところ、来るのが早すぎたとようやく気づく。
 不安だなんだと言いながら、結局は彼に会いたくて仕方がないという本心が隠しきれていなかった。どうしたって私は、千隼さんが好きでたまらないのだ。

 片隅の壁に背をあずける。そうして、千隼さんの姿を見逃さないように、混み合うフロアを眺めていた。
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