愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
 頬を伝う唾液もそのままに、しばらく没頭する。その間に、纏っていた服は彼の手で脱がされていった。

 上半身は下着だけにされ、ベッドの中央に優しく押し倒される。
 羞恥と求められる喜びに、瞳が潤んでしまう。そのしずくがこぼれ落ちる前に目じりに口づけた千隼さんの唇は、頬を伝い首筋へと降りていった。

 どうしていたらいいのかわからず、両手はシーツを握りしめた。
 なにかをたしかめるように、彼の温かな手が何度も私の体の輪郭をなぞっていく。その温もりに安堵を感じつつも、鼓動は痛いくらいに打ちつけてくる。

 下着の上から、胸もとに触れられる。ハッとして無意識に閉じていた瞼を開ければ、それに気づいた彼と視線が絡んだ。

 いつもの千隼さんは、冷静で落ち着いた男性だ。
 それなのに今は、その瞳に情欲の色が見え隠れしている。
 徐々に余裕をなくしていく彼の姿に、下腹部の奥がきゅっと疼く。さらに、握りしめていた手に力がこもった。

 目を合わせたまま再び深く口づけられ、没頭しているうちに下着が外されていた。

「綺麗だ、小春」

 スタイルに自信などまったくなくて、途端に恥ずかしさが増す。
 フルフルと首を左右に振った私の頬に、彼の手が添えられた。

「本当に、綺麗だよ」

 それから彼は、私の胸もとに口づけを落としていった。
 チクリとした痛みが走った個所に目を向けると、赤く色づいていた。それがキスマークだと遅れて悟り、頬が熱くなる。
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