拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「ああ、俺はそう思っているぞ。もちろん君の事情も知った上でだ。君はよく、姉君がいかに優れた淑女であるか口にするな? だが、そもそも人の格というのは見目や所作の美しさ、はたまた貴族社会の作法やルールにいかに上手く適合しているかだけが判断基準ではないはずだ。君は人として一番大事なものをちゃんと知る、素晴らしい女性だ。だから、そのままの自分を誇ったらいい」
 耳にして、胸がじんわりと温かなもので満たされる。
 ……また、だ。ファルザード様は、以前も『自然体の君で』とそう声をかけてくれた。
 あの時も、今も。彼はありのままの私を認めようとしてくれる。私が本当にそう評されるに相応しいかは分からない。けれど、彼の言葉は確実にカラカラに渇いた私の心を潤わす。
 その後もファルザード様とたわいもない会話をしながら帰路を進んだのだが、心と体がふわふわして、私はどこか上の空だった。
「ではな、ティーナ。俺はここで失礼するよ」
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