拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
第四章 垂れ込める暗雲
三日後。私は珍しく花畑に大挙して押し寄せた子供たちに手を引かれ、孤児院の建屋へと向かっていた。
「ほーら。ティーナもこっちに来て!」
ラーラも突然の状況に首を右に左に傾げつつ、私の後をついてくる。
「でも、私は……」
「いいからいいから!」
なんと、これから王太子ジェニス殿下が慰問にやって来るのだという。孤児院のスケジュールでは事前に組まれていた予定らしいが、私がこれを知らされたのは無情にも慰問当日の今日だ。
驚きに声をなくす私に、ミリアは『あれ? 言ってなかったっけ』とあっけらかんとしたもので、さらに『孤児院にいる全員が玄関前に並んで出迎える』のだと告げた。
これを聞かされて、私は青くなった。
ただし慰問自体形式的なもので、訪問は極短時間だそう。ならば、なんとか花畑でやり過ごせないかと逃げ隠れていたのだが、子供たちはそれを許してくれそうにない。
そうこうしているうちに、玄関先に他の子供たちや職員さんたちも集まってきてしまう。