拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 お父様が驚きつつ、すかさず『うちの次女のティーナです。マリエンヌとは異なり引っ込み思案な性格でして。無作法をご容赦ください』と先手を打って伝えてくれた。お客様は笑顔で頷き、お父様相手に『それはまた、奥ゆかしいお嬢様ですな。いやいや、タイプの異なる美しいお嬢様ふたりに囲まれて、羨ましい限りですよ』と軽い調子で話しながら帰っていった。
 結局、私はお客様に挨拶の言葉をかけることも、その顔を直視することもできなかったけれど、カーテシーの形を取って見送ることはできた。
 玄関の扉が閉まった瞬間、深い安堵となんとも言えない虚脱感に包まれながら、へなへなとその場に座り込んだ。
 お父様のおかげもあって、お客様があえて私に話題を振ってくることもなく、同時に私の粗がそれ以上露呈することもなく、実にあっさりと終わった見送り。
 へたり込む私の横で、両親は手に手を取って大喜びしていた。お姉様は私に背中を向けていたからその表情は見えなかったけれど、きっと喜んでくれているだろう。
< 108 / 307 >

この作品をシェア

pagetop