拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 嘘でしょう? まさか殿下は、このまま子供たちに言葉ひとつかけずに帰ってしまう気じゃないわよね?
 慰問とは名ばかりの、やっつけ仕事。いくら殿下が望んで組まれた公務でないにしても、これではあんまりだ。
「はい、ありがとうございます。すぐに年長の子らが……マーク! ライアン! ブライト!」
 院長先生の名指しを受けた男の子たちが即座に列を外れ、荷運びのため侍従と共に馬車に向かった。
「これ! 馬車の扉は開けんでいい! ドアハンドルにそなたらの手垢がついてしまう」
「す、すみません」
 ドアハンドルに手を掛けようとしたところを侍従にピシャリと制されて、ライアンが肩を縮めて頭を下げる。
 ひどい。殿下にしても、その侍従にしても、あまりにも横柄だ。
 私は彼らの言動に唖然としつつ、固唾をのんで状況を見守る。やはり殿下はこれ以上、院長先生とも子供たちとも関わる気はないようで、やる気なさそうにくるりと踵を返そうとして──。
「っ、そなた……!」
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