拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 その客が立ち去ったタイミングで、ラーラがティーナの足をポフポフしながら訴える。
『みゅー《ティーナ、ザイオンとファルしゃまがあっちにいるよ》』
 ラーラの鳴き声に、ティーナが小首を傾げながら周囲に視線を巡らせ──。
「なぁに、ラーラ? ……まぁ! ファルザード様」
 俺たちに気づいたティーナは一瞬目を瞠り、次いでふわりと微笑んだ。
 その笑みを目にした瞬間、胸に湧きあがる得も言われぬ愛おしさに、ストンと腑に落ちるものがあった。
 あぁ、そうか。これは、俺にとって初めての感情なのだ。
 目と目が合えば心がときめき、微笑まれれば俺の顔にも自然と笑みがこぼれる。彼女に憂いがあるのなら取り除き、害成す存在が迫るなら全力で排除して守りたい。そして彼女の一番近い場所に俺がいることを許してほしい。
 いつの間にか俺の心の真ん中には彼女がいる。二十七年生きてきた中で、こんなにも自分の心に誰かを住まわせたことはない。なにより俺自身が、これを喜びと捉えていた。
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