拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 ……きっと、人はこれを恋と呼ぶのだろうな。遅すぎる初恋の自覚に苦笑しつつ、なんともいえないこそばゆい思いと、それを上回る精神の充足を感じていた。
「あー、ファルザード様じゃん! 聞いてくれよ、さっきまで嫌な奴がいてさ。胸糞悪いったらないよ」
 俺がティーナに声を掛けるよりも先に、ミリアがズイッと身を乗り出してくる。
「こーら、ミリアったら。何事もなく帰っていかれたんだし、それはもうよしとしましょう。それよりファルザード様、先日いただいた肥料が追肥にとても向いていたようで。これまでいろんな肥料を見てきましたが、あんなに即効性で効果が出たのは初めてです」
 ティーナは苦笑して、声高に罵りを口にするミリアを窘め、俺に別の話題を振ってきた。
 てっきりジェニスのことで真っ先に相談を持ち掛けられるとばかり思っていた俺は、少し拍子抜けする。同時に、もしかすると俺は彼女にとって頼るに足らない存在なのだろうかと、そんな悲観的な感情も過ぎる。
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