拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 俺はティーナの手にそっと自分の手を重ね、その反応を窺う。
「? どうかしましたか?」
 ティーナは淡い笑みを浮かべたまま、不思議そうにしている。嫌がる素振りはまるでなく、俺と重なったままの手もそのまま引き抜こうとはしなかった。
 彼女の反応に勇気づけられ、軽く指先を握り込む。ほっそりとした手は俺が強く掴めば壊してしまいそうな気がして、慌てて力を緩めた。
 けれど、せっかく取った彼女の手を完全に離してしまうのは惜しまれて、おっかなびっくりで掠めるようなタッチで包み直した。
「ふふっ、ちょっとくすぐったいです」
 肩を竦め、クスクスと声を漏らす彼女の可憐な姿に、ギュッと心臓が締め付けられる。
 独占欲と圧倒的な愛おしさに突き動かされ、スッとその手を持ち上げて指先に極軽く唇を寄せる。触れたのはほんの一瞬。しかも羽が撫でたかのような、ほんの些細な接触。
「消毒だ」
 俺が小さく漏らした言葉は、いっぱいいっぱいの様子の彼女の耳には入っていないようだった。
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