拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「そなたは病魔に侵された儂に触れるのを躊躇わんのだな」
 ひとしきり咳症状が治まった叔父は、奇異なものでも見るような目を向けながら呟いた。
 先陣に立ってこの病の情報収集と調査にあたっているのだから、感染率の高さを知らないわけがない。ただし、だからこその知識も蓄積されている。
 罹患した者の呼気や飛沫などを介して、〝病のもと〟となるものが他者に移るのは事実。しかし、接触後に手指や口腔をしっかり洗い流すなどの基本的な対策でその確立を下げることができる。
 加えて、病のもとが体内に取り込まれても、若く健やかな体を維持している者の方が病に移行するリスクは低い。
「私は状況調査で先陣に立っておりますから、いたずらに病を怖れはしません。もちろん慢心せず、出来得る限りの対策を取ることが前提ですが」
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