拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「ファルザードよ。王城内外から、悪化していく状況に碌な対策も立てられぬままの儂と王家に対して不信と不安の声あがっている。儂が言えた義理でないのは百も承知だ。だが、どうか王国の危機を助けてはくれまいか?」
「それは、此度の指揮を私に執れと仰せでしょうか?」
「その通りだ。儂としては、現在、ジェニスに移している対策の全権をそなたに委ねたいと考えている」
 ジェニスの性格上、全権移譲の不名誉をすんなり受け入れるとは思えない。どころか、これを切欠に叛意ありと俺を糾弾してくる可能性もあり得そうだ。
 今は万が一にも王家内でくだらぬ勢力争いを繰り広げている場合ではない。
「厳しいことを言うようですが、現実的ではありません。もちろん私に否やはありませんが、十中八九ジェニスは私の政治介入を拒むでしょう。陛下がこれを強硬すれば王家の信頼を根底から崩す不名誉な結果を招くやもしれません」
「……うむ」
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