拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「混乱を避けるために公表は差し控えているが、陛下の病状は芳しくありません。到底政務に携われる状態ではなく、現在、政治的判断の事実上の決定権はジェニス殿下が有しております。しかしながら、殿下はこれまで政権にはまったくのノータッチ。病の蔓延にも有効な対策を打てぬまま後手後手の王家の対応に、国民からは不満の声が高まっている」
 耳にして、私の眉間に皺が寄る。
 ジェニス殿下が最終的な決定権を? ……それはおかしい。
 だって、殿下はほとんど毎日のように私のところにやって来ては、こちらの状況などお構いなしに『異国の楽団を呼び寄せた』とか『目新しい品を購入した』とか、そういった話を延々と話して聞かせ、気が済むと帰っていく。今日は来なかったが、昨日も一昨日も私が孤児院にいる間中ずっと側に張り付いてそんな話をしていた。
 無下にもできず話半分に聞きながら、王太子というのはよほど時間とお金に余裕があるのだと困惑と共に理解していたのだが……。
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