拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「シェルフォード侯爵! 貴殿とて、本心では既にお分かりだろう!? 国民が求めるのは、婚姻という確固たる結びつきであり、単なる支持表明では弱いのです。加えて、ジェニス殿下はただでさえ年若い。一国の王としての安定感を考えるなら、妻帯の事実は確実にあった方がいい。そして殿下の妻にはシェルフォード侯爵家のご令嬢を是非とも推したい。殿下本人と両陛下に加え、これは我ら臣下一同の総意でもございます」
 こんな内情を聞かされたからと、絶対に了承なんてできない。だけどいざ、反論を口にしようと思えば、どこから突破口を拓けばいいのか途方に暮れる。
 薄く唇を開いたり閉じたりしながら、頼りのお父様を見た。
 ところが、そのお父様もここまで言われてしまったからか、額に手をあてて力なくソファに体を沈み込ませている。どうしよう。どうすれば……、ファルザード様──。
 脳裏に、前々回会った時に彼から告げられた真摯な言葉と眼差しが思い浮かぶ。
 その時。
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