拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「少なくとも、侯爵家の長子としてあらゆる可能性を視野に励んできた私には、一国の礎となる覚悟がございます。もちろん、私でなくともよいのです。当家には及ばずとも、国民からの支持の高い家は幾つかありましょう。それらの家々の自覚と覚悟を持った令嬢からこそ、殿下の妃を選出すべきだと思います」
 惚れた腫れたや好悪、すべての感情を超越した重たい言葉だった。これにはエイムズ卿も返す言葉がないようで、口を引き結んだまま頷いていた。
「ここで私が具体的に提案したいのは、殿下とそういった令嬢たちとの出会いの場の設置です。察するに、ティーナと殿下は出会ってまだ日が浅い様子。もしそこでティーナへの寵愛を覆す新たな出会いが創造できれば、それは我が妹や国民にとっても、なにより殿下自身にとってもよい結果と言えるのではないかと」
 感銘を受けた様子のエイムズ卿が、思わずといった調子で漏らす。
「惜しいことだ。もし、殿下が見初めたのがあなたであったなら……っと、失礼。これは言っても詮無きこと」
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