拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 エイムズ卿は途中でハッとしたように発言を撤回したけれど、あの言葉は紛れもない彼の本音だったろう。もとより一目置いていた私ですら、改めてお姉様のすごさを実感していたのだから。
 その後、エイムズ卿と話を詰めていく中で、見合いという名の懇親の席をできるだけ早急に設ける方向になった。あれだけ強固に婚姻を進めようとしていたエイムズ卿が、お姉様の主張を全面的に受け入れた格好だ。一国の安寧を見据えてのお姉様の発言には、それだけの力があったのだ。
 お姉様の機転で殿下の婚姻が一旦保留となったことに、私は愁眉を開いた。
 そうして話が済むと、エイムズ卿は私やお父様に非礼の詫びを丁寧に伝え、王城に帰っていった。

 その日の夜。
「いったいどういうつもり!? あなたは孤児院でなにをしてるのよ!?」
 呼び出されて向かったお姉様の部屋。ノックして入室するや、お姉様が声を荒らげた。エイムズ卿や両親らを前にしていた時とは違う刺々しい追及は、まるで私に瑕疵があったかのようだ。
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