拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 いつにないお姉様の態度が私を混乱させ、萎縮させた。
「慰問にやって来た殿下とたまたまお会いした後、頻回に訪ねてらっしゃるようになって。私にもなにがなんだか。ただ、殿下と私は誓ってそういった仲では……」
 お姉様の気迫に押されつつ、私はしどろもどろにエイムズ卿が帰った後の居間で両親やお姉様たちに語った内容を繰り返す。
「そこはもう何度も聞いたわよ! そうじゃなくて、現実問題あなたが殿下の気を引いたからこそ、こんなことになっているんでしょう!? 出会いからここまで、殿下との交流や会話の仔細をすべておっしゃい!」
 私が殿下の気を引いた? そんなことはあり得ない。
 だって殿下は……。
「慰問のあの日、出迎えの列に立っている時に目が合ったら、とても驚いた様子で私の腕を取って来て、そこから連日のように孤児院に通ってくるように。会話すら交わしていない中で、私が殿下の気を引くだなんて、そんなことはけっして」
 狼狽えながら訴えたら、お姉様が眉を吊り上げた。
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