拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「たとえそうだとしても、いきなり放り出すような身勝手はしたくありません」
「っ、分からない子ね! のこのこ孤児院に出ていって、殿下に会ったらどうするのよ!?」
「その時は自分の口から、きちんと辞退をお伝えしようと思っています」
「もういいっ、話にならないわ! 出ていって!!」
 お姉様は握りしめた拳をわなわなと震わせて叫ぶ。激昂するお姉様に、私はひどく慌てた。
「お姉様、待って──きゃぁ!」
 胸のあたりを乱暴に押しやられて、取り付く島もなく部屋から閉め出されてしまう。
「これまで私がどれだけ心を砕いて王妃様に尽くしてきたかっ……、やっと努力が実を結んで殿下にご紹介いただけるところまで漕ぎつけて。目の前に王太子妃の椅子が見えてきて……すべてがうまくいくはずだったのに……っ、全部、全部台無しよ! お前は昔からそうやって無自覚に私から奪っていく! 金輪際、お前の顔なんか見たくもないわ!」
 お姉様が扉の向こうで捲し立てていたが、今はショックからまともに物を考えることが難しい。
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