拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 ジェニスの王位継承までカウントダウンが始まっている。それなのに、病の蔓延と反比例するように王家の求心力は落ちる一方。王妃や忠臣らは、少しでもその地盤を盤石なものにするべく、シェルフォード侯爵家との縁を急いだのだろうが……。
 どんなにジェニスが婚姻を望んだところで、ティーナの心も得られていない状態では、所詮奴の勇み足だと甘くみていた。俺の読みが甘かったのだ。
『ニャー《シェルフォード侯爵家の国民人気は高い。窮地の王家が藁にも縋る思いで取り込もうと動く可能性はあったろうさ。まぁ、今回はそなたも油断したな》』
 俺が調査した限りでは、もともと廷臣たちはジェニスの戴冠後の婚姻を目指し、シェルフォード侯爵家と話し合いを進める心づもりでいたはず。少なくとも、最低限の手順を踏む気も準備もあったようだ。
 それが一気に動きだしたのは、おそらく王家に対する世間の評価が予想以上に悪いせいだ。いずれにせよ、ザイオンに言われるまでもない。
「ああ。これは俺の慢心が招いた事態だ」
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