拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 その場合、嫌でもジェニスと真っ向からぶつかることになる。避けたい状況ではあるが、ティーナを守るためならば、躊躇はなかった。もっとも、これは最終手段だが。
『ニャー《ほーう。ま、そういうことにしておこう》』
 俺の内心などお見通しといったザイオンの様子が腹立たしい。
 まったく。分かっているなら、聞かねばいいものを。
 そうこうしているうちに、シェルフォード侯爵邸の正門が近くなってくる。
 見上げたティーナの自室の窓からは、レースのカーテン越しに明るい光源が見て取れた。
「まだのようだな」
 ティーナが出てくるのを待とうと、道端に場所を移ろうとしたその時。
 ティーナの部屋の隣の窓が開き、金髪碧眼の女性が姿を現す。実際に顔を合わせるのはこれが初めて。それはシリジャナとの国交樹立十周年記念式典の絵に描かれていた女性──マリエンヌだった。
 俺と視線が合うと眉を寄せ、まるで不審者でも見るように蔑みの籠もる目を向けた。
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