拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 あまりにあからさまな反応ではあるが、往来から他家の敷地内を見上げていた俺にも非はある。しかも俺はいつも通りの軽装なので、パッと見貴族館の来客というより働き人に近い印象だ。不信感を抱かせてしまったのかもしれない。
『ニャー《ははぁ。チビ助の言っていた通り、これまた凄まじい陰気を纏った女だな》』
 面白そうにザイオンがこぼすのを無視し、俺はすぐに場所を移ろうと背中を向けた。
「ファルザード様!?」
 俺が足を踏み出しかけたところで、玄関から出てきたティーナに声をかけられる。
「ティーナ」
 振り返り、駆け寄ってきたティーナに向き合う。ティーナは俺の顔を見ると、嬉しそうに笑みをこぼした。
 その足もとにはラーラがぴったりと寄り添っている。ラーラはもうバスケットには入っていなかった。俺が前回慌ただしく孤児院に顔を出してから十日ほどの間に、足取りが目に見えてしっかりしていた。
 顔つきや雰囲気も少し変わったようだった。すかさずザイオンがラーラに歩み寄り、話しかけていた。
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